1. 研究背景
現在日本では、下水汚泥は国により肥料としての利用を最優先に進めていく方針が示されています。図1に令和4年度における下水汚泥の利用状況を示します。下水汚泥はリンや窒素を豊富に含んだ資源にもかかわらず、年間約60万tが未利用となっています。下水汚泥の肥料化技術の中で堆肥化(コンポスト化)は、発酵熱により有害微生 物の死滅を図れること、臭気を減少させることなどの利点を有しています。
様々な企業や自治体でコンポスト化が行われていますが、投入する廃棄物や副資材によって発酵温度や作製したコンポストの性状が変化します。本研究では、下水脱水汚泥をコンポスト化させ、どのような条件で発酵温度が変化するか、完成したコンポストの状態が変化するかを検討します。しかし、やり方や材料は企業や自治体ごとに違うため、新規でコンポスト化を行う場合、うまく温度が上昇しないこと等の問題が発生する可能性があります。

図1 令和4年における下水汚泥の利用状況
2. 研究目的
本研究では、下水脱水汚泥をコンポスト化させ、どのような条件で発酵温度が変化するか、完成したコンポストの状態が変化するかを検討します。嫌気性消化後の脱水汚泥に種菌と副資材を配合し、コンポスト化を行い、特に発酵温度が最低条件である60℃を超える条件について検討します。
3. 実験方法
脱水汚泥を基質として、種菌となる市販肥料と副資材を配合して送気と保温が可能な図2の小型堆肥化装置へ投入し、経過を観察します。図3にコンポスト化のフロー図を示します。温度が初期温度に近づいた時に全体を混ぜ返して水分と残存している有機物を均一にして、全体の発酵を促します。これを繰り返し、切り返し後も温度の上昇が見られなくなった場合に実験終了とします。

図2 小型堆肥化装置の概要図

図3 コンポスト化のフロー図
4. 実験結果
本研究では様々な条件でコンポスト化実験を行い、その中で副資材としてもみ殻くん炭を用いることによる臭気の減少効果、種肥料として発酵鶏糞肥料を用いることによる含水率低下と通気性の向上が得られることが確認できました。図4に熱源として食用油を添加した場合の温度変化グラフを示します。下水汚泥のコンポスト化で温度が上昇しなかった場合、食用油を添加することで熱源となり、60℃以上まで温度が上昇することが分かりました。また、脱水汚泥の種類や処理場の違いは影響を与えないことを確認しました。

図4 食用油を添加した場合の温度変化
