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1.研究背景
 水質汚濁の要因となる汚染は大きく分けて、工場や生活排水といった汚染源が明確かつ高濃度となるポイント汚染と、農業で使用される農薬や、道路に堆積した汚染物質の流出といった低濃度だが発生要因が複雑なノンポイント汚染の2つに分けられています。近年ではポイント汚染への対策が進んだことで、相対的にノンポイント汚染が目立つようになっており、ノンポイント汚染要因の1つである道路排水には道路に堆積した重金属等が含まれ、それらが雨によって自然界に流出していることが問題となっています。

2.目的
 本研究では化学特性により重金属吸着能力を持つポーラスコンクリートを作製し、水質浄化設備として道路排水による環境負荷低減を図ることを目的としています。ポーラスコンクリートは多くの空隙を有することから透水性に優れ、水との接触面積が高い特徴を持っています。また、本研究室ではポーラスコンクリートの吸着能力向上に向けて、同様に重金属吸着能力を有した天然ゼオライトを配合した供試体の作製を行っており、高い吸着性能とその有効性が確認されています。

3.実験方法
 重金属除去能力の評価をカラム連続通水実験にて行っています。本実験では実道路排水の高濃度レベルであるCu:0.3mg/L、Pb:0.3mg/L、Zn:3.0mg/Lの混合溶液を作成し、想定する雨水管の集水面積と降雨強度から流量を55mL/minとして図1に示すように通水を行います。

 その他に、ゼオライトまたはポーラスコンクリートの吸着ポテンシャルの評価を行うバッチ吸着実験、ポーラスコンクリートの透水性能の評価を行う透水限界試験、酸性環境による重金属溶出を想定したカラム溶出実験なども実施しています。

カラム連続通水実験概要図.png

図1 カラム連続通水実験概要図

4.結果 

 図2はカラム連続通水実験の結果で、各重金属に対する除去率の経時変化を示したものです。ゼオライト無配合のものをプレーン、セメントの20%をバッチ吸着実験で高い重金属吸着性能を示したゼオライトで置換したものを20%、ゼオライトによる吸水を考慮しセメントの20%及び30%を同ゼオライトで置換したものをそれぞれW20%、W30%としています。

 プレーンと比較して全ゼオライト配合系において重金属吸着性能の向上が確認されました。特に20%やW30%では2倍程度の除去率を示し、ゼオライト配合の優位性を確認することができました。また、重金属無添加で流量を10倍にしたカラム溶出実験を実施した結果、重金属の溶出率は最大でも2%程度であり、ポーラスコンクリートは重金属保持性も優れていることが分かりました。

Cu除去率.png
Pb除去率.png
Zn除去率.png

図2 各重金属除去率

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